第14回〜第21回数理の翼セミナー 〜セミナーOB・OG参加型のセミナーへ〜
1996年度,数理科学振興会は2000年を目処に数理の翼セミナーの実施を取りやめることを表明.これを受けて,湧源クラブは,主催を引き継いでセミナーの開催を継続してゆくことを決定した.以後,この準備のため,湧源クラブ内でセミナー実行委員会が組織され,セミナー開催のために数理科学振興会の行っていた作業をすこしづつ引き継いでゆくことになった.
□第14回 1993年8月 6日〜12日 山口県徳地(参加者70名) ☆講義・・・ [全体講義] 「連分数」(Bernard Teissier) 「Eulerの公式」(Le Dung Trang:パリ第7大学教授) 「1/fゆらぎと脳の話」(武者 利光:東京理科大学工学部電気工学科教授) 「計算から公式を理解する」(堀川 穎二:東京大学大学院数理科学研究科教授) 「Lorentz変換」(Bert Engelkemier:通信総合研究所標準計測部時空計測研究室) 「フラクタル」(★高安 秀樹:東北大学大学院情報科学研究科教授) 「確率論とその周辺」(★道工 勇:埼玉大学教育学部数学科助教授) 「脊椎動物形態学と数理生物学」(★増田 弥生:自治医科大学第一解剖学教室助手) 「曲がった3次元とまっすぐな無限次元」(★河東 泰之:東京大学大学院数理科学研究科助教授) [選択講義] 「コンピュータとインターフェイス」(★美馬 義亮:日本IBM東京基礎研究所) 「並列計算機と計算物理学」(★高石 哲弥:広島大学博士課程物理学専攻) 「森林の経営計画に関する最近の話題」(★松村 直人:森林総合研究所四国支所) 「コンピュータと数理科学のはざまで」(★鶴見 智:豊橋技術大学知識情報工学系) 「心理学の研究方法について」(★川村 智:大阪大学大学院人間科学研究科行動学選考博士課程) 「尻尾をくわえたヘビーベンゼンの構造式の話」(★泉 俊輔:広島大学理学部化学科助手) 「非線形の話」(★山崎 満:東京大学大学院数理化学研究科) 「プログラムの形式的意味論」(★林 祥一:富士ゼロックスシステム技術研究所) 「スペース天文学入門」(★原 弘久:東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程)
第15回セミナーでは、脳やコンピュータに関する著名な先生方が多く招かれた。
この機会に、セミナー講師陣と湧源クラブの若手研究者を交えた「ワークショップ」が、セミナーと並行して行われた。(ワークショップの参加者の一部はセミナーにも内部講師として参加している)
またこのセミナーでの講義録の一部は、「脳とコンピュータ」という形で、後日ジャストシステムから出版されることになった。
□第15回 1994年8月 4日〜11日 岡山県吉備高原(参加者78名) ☆講義・・・ [全体講義] 「コンピュータで地図を作ろう」(Mitchell Feigenbaum:Rockfeller 大学教授) 「脳科学」(吉成 真由美:Harvard University 大学院博士過程在学中) 「脳とは何か」(養老 孟司:東京大学医学部教授) 「抗体の多様性の研究と海馬における記憶の研究」 (利根川 進:Massachusetts Institute of Technology 教授) 「バーチャル・リアリティー」(廣瀬 通孝:東京大学工学部産業機械工学科助教授) 「脳・心・コンピュータ」(松本 元:筑波大学電子情報工学系教授) 「人工知能と遺伝的アルゴリズム」」 (北野 宏明:ソニーコンピュータサイエンス研究所) 「数学の地図」(広中平祐:財団法人数理科学振興会理事長,京都大学・ハーバード大学名誉教授) [選択講義] 「脳機能局在について」(★河崎 洋志:京都大学医学部) 「SFロボット心理学・・・Short Circuit は知性の始まり?」 (★国吉 康夫:電子技術総合研究所) 「代数方程式の解法について」(★永井 礼正:東京工業大学大学院理学部数学科) 「細胞レベルから見た老化の分子生物学」 (★今井 眞一郎:慶応義塾大学医学部微生物教室助手) 「宇宙医学と数理科学」(★上野 俊昭:東京警察病院脳神経外科医師) 「情報化社会へのパラダイムシフト」(★鈴木 康正:インテリジェントテクノロジー) **同時進行で「数理の翼ワークショップ」を開催。第16回セミナーでは,開催地である筑波の利点を活かし,つくば学園都市にある研究所(工業技術院電子技術総合研究所,文部省高エネルギー物理学研究所,農業生物資源研究所)への見学も行った.
□第16回 1995年8月 3日〜 9日 茨城県筑波(参加者74名) ☆講義・・・ [全体講義] 「超システムとしての生命」(多田富雄:東京大学名誉教授) 「タイル張り・無限群・非ユークリッド幾何学・曲面のトポロジー」 (深谷賢治:京都大学理学部数学科教授) 「生き物と私の生物学」(岡田節人:京都大学名誉教授) 「The Mathmatics of Virus Shell Assenbly」(Bonnie Ann Berger:MIT助教授) 「4次元を見てみよう」(松本幸夫:東京大学教授) 「宇宙はいかにして生まれたか?」(佐藤勝彦:東京大学教授) [選択講義] 「ニューラルネットワーク」(★掛谷英紀:東京大学先端技術科学研究センター) 「ジャコウネズミの咀嚼」(★増田弥生:自治医科大学第一解剖助手) 「細胞死の分子生物学」(★松本義久:東京大学大学院生物化学専攻) 「バーチャルリアリティー」(★マイケル・ケイン:(株)シャープ) 「地面の下を調べる話」(★木村仁:(株)ダイヤコンサルタント) 「積分について」(★塩田隆比呂:京都大学理学部助教授) 「ブラウン運動をめぐる物理」(★服部裕司:東北大学流体科学研究所) 「アルゴリズム」(★溝口佳寛:九州工業大学情報工学部助教授) 「フーリエ変換とウェーブレット変換」(★森藤紳哉:奈良女子大学数学教室学助手) 「細胞レベルから見た老化・不死化の分子生物学」 (★今井眞一郎:慶応義塾大学医学部微生物教室助手) 「可解格子模型のお話」(★大島和幸:名古屋大学理学部) 「固体表面−2次元の世界の物理と化学ー」(★小野寛太:東京大学物性研究所) ※このほか,企画として「研究所見学」が行われた. **同時進行で「数理の翼ワークショップ」を開催。
第17回・第18回セミナーでは新たな試みとして「少人数セミナー」が行われた。これは参加者が数人ずつのグループに分かれ、その中で各グループ一冊の本を輪講するものである。取り上げられる本は、主に大学の理科系学部の初等レベルで教科書として用いられているものを用い、さらにその分野を専攻・もしくは精通している大学生をグループのリーダーとして配置した(例えば医学書であれば医学部生)。高校生にとっては、内容の難しさもさることながら輪講という慣れない形式に当初はとまどいもあったようだが、次第に積極的に討論に参加するようになった。
□第17回 1996年8月 3日〜10日 大分県九重町(参加者73名) ☆講義・・・ [全体講義] 「自然界に現れる形」(三村昌泰:東京大学数理科学研究科教授) 「社会基盤としてのコンピュータ」(坂村健:東京大学総合研究博物館教授) 「血管系の学問の成り立ち」(眞崎知生:京都大学医学研究科教授) 「量子力学序論」(河合光路:九州大学理学部物理名誉教授) 「自然はみんな知っている」(秋山仁:東海大学教育研究所主任教授) 「生体に学ぶ新しい情報処理方式 〜ニューラルネットワークとカオスネットワーク〜」 (山川烈:九州工業大学情報工学部長) 「代数幾何学入門」(宮岡洋一:京都大学数理解析研究所教授) [選択講義] 「4次元多様体論の現状と課題」(★池田和正:東京大学数理科学研究科) 「マイクロ波回路設計」(★武内均:日本MSC) 「グループウェアについて」(★藤田慎一:電通国際システム) 「半導体産業の市場動向予測」(★秋田純一:東京大学工学部電子工学科) 「数学が好き!」(★上野雄文:熊本大学理学部数学専攻) 「御遺体の行方〜法医学者のお仕事」(★富田明代:慶応義塾大学医学部助手) このほかに企画として「少人数セミナー」が行われた.
□第18回 1997年8月 5日〜11日 山口県由宇町(参加者73名) ☆講義 [全体講義] 「宇宙の表と裏」(砂田利一:東北大学理学部研究科教授) 「ゼータ惑星の探検」(黒川信重:東京工業大学理学部数学科教授) 「大規模集積回路を構成する極微細トランジスタの世界を覗く」 (平本俊郎:東京大学生産技術研究所助教授) 「コンパスと定規で正多角形を作図する」 (小田忠雄:東北大学理学部数学科教授) 「動物の形作りと細胞間の情報伝達」(梅園和彦:京都大学ウィルス研究所教授) [選択講義] 「時を刻む物質〜原子時計から生物時計まで〜」(★島田敏宏:東京大学理学部化学科助手) 「コンピュータを速くする方法」(★秋田純一:東京大学工学部電子工学科博士課程) 「特殊行列式論」(★永井礼正:東京大学理工学研究科博士課程・帝京大学非常勤講師) 「関数たちの結びつきについて」(★竹村剛一:京都大学数学数理解析研究科博士課程) 「細胞のことはどこまで分かったのか」(★羽原靖晃:九州大学生物学専攻博士課程) 「複素数と振動現象」(★前園涼:東京大学工学部物理工学科博士課程) このほかに企画として「少人数セミナー」が行われた.
第19回セミナーでは「小疑問(こぎと)」という企画が行われた. これはスタッフ・班長があらかじめ考えておいた(数学・物質・哲学などの諸分野の)問題について,自分の興味のある問題を各自選んで,自分と興味の近い人同士の間で,その問題について自分の考えたことをお互いに自由に発表し合うというもの.
□第19回 1998年8月 5日〜12日 福岡県福岡市志賀島(参加者79名) ☆講義 [全体講義] 「脳の働く仕組みを考える」(伊藤正男:理化学研究所脳科学総合センター所長) 「RoboCupについて」(北野宏明:ソニーコンピューターサイエンス研究所) 「『脳と心』脳を作る〜成長の要因とは何か〜」(松本元:理化学研究所脳科学総合センターレインウェイグループ) 「脳型コンピュータの実現にむけて」(市川道教:理化学研究所脳科学総合センター) 「超伝導の量子力学的抽象の理解」(北沢宏一:東京大学工学部応用化学科教授) 「楕円曲線の不思議」(加藤和也:東京大学数理科学研究科教授) 「精神分裂症について」(香山リカ:精神科医) 「結び目と特異点」(広中平祐:財団法人数理科学振興会理事長,山口大学学長,京都大学・ハーバード大学名誉教授) [選択講義] 「コンピュータの作り方と数学と物理と社会と」(★秋田純一:金沢大学工学部電気・情報工学科助手) 「薔薇はなぜ薔薇の香りを作るのか?〜植物のプログラムされた細胞の死(アポトーシス)と『復活』」 (★泉俊輔:廣島大学理学部助教授) 「特殊相対論の誕生」(★前園涼:東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻博士課程) 「デジタル回路の基礎」(★網頭哲男:日立製作所半導体事業本部DRAM事業部開発部) 「未来型電池〜電池は未来を変えることができるか〜」(★江頭港:九州大学機能物質科学研究所助手) 「数理科学の現代経済への挑戦」(★帯田大悟:横浜銀行) このほか,企画として「小疑問(こぎと)」が行われた. □第20回 1999年8月 7日〜13日 北海道七飯町大沼(参加者87名) ☆講義 [全体講義] 「量子計算機について」(井桁和浩:ATR(国際電気通信基礎技術研究所)環境適応研究所) 「科学・技術と社会−科学の変質」(村上陽一郎:国際基督教大学文学部教授) 「Mathmatical beauty expained by an example of a pazzule」 (荒木不二洋:東京理科大学理工学部数学科教授) 「複雑系の考え方」(吉永良正:フリーサイエンスライター) 「染色体・遺伝子のメカニズム」(舛本寛:名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻講師) 「代数多様体の特異点理論」(広中平祐:財団法人数理科学振興会理事長,山口大学学長,京都大学・ハーバード大学名誉教授) [選択講義] 「楕円曲線論〜フェルマーから谷山志村予想,BSD予想まで」(★上野雄文:熊本大学大学院数学専攻) 「分子遺伝学,植物で雄と雌が出会うまで」(★清水健太郎:京都大学大学院理学研究科植物学教室博士課程) 「地中で実現される無重力環境〜地下無重力実験センター〜」(★槌本昌則:北海道工業大学電気工学科講師) 「先端制御理論とロボット技術の世界」(★浅野文彦:東京工業大学大学院理工学研究科制御工学専攻博士課程) 「比較的小さな銀河の形成と進化について」(★生田ちさと:東京大学大学院理学研究科天文学専攻博士課程) 「デザイン理論〜符号理論・実験計画法とは?」(★萩田真理子:慶応義塾大学大学大学院理工学研究科数理科学専攻博士課程) [企画講義] 「折り紙で数学しよう!〜フリーハンドの幾何学〜」(★川村みゆき:神戸大学大学院自然科学研究科物質科学専攻博士課程) ※この他,企画として「ロボットで遊ぼう」「科学者の倫理シンポジウム」が行われた.第21回は,数理科学振興会が主催として参加する最後の数理の翼セミナーとなった.
□第21回 2000年8月18日〜22日 京都府京北町(参加者41名) ☆講義 [全体講義] 「遺伝について」(石浦章一:東京大学大学院総合文化研究科教授) 「カオスとフラクタル」(宍倉光広:広島大学理学部数学科教授) 「ガン免疫療法の紹介」(山岸久一:京都府立医科大学教授) 「数理モデルで砂遊び」(★小川知之:大阪大学基礎工学研究科助教授) 「超実数の作り方」(★河東泰之:東京大学大学院数理科学研究科教授) [選択講義] 「人工の骨を作る試み」(★大矢根綾子:京都大学工学部工業化学科博士課程) 「データベースの活用とインターネット」(★鴨志田良和:日本オラクル) 「気象情報の使い方」(★中村恵子:株式会社Weather News) 「酒は体に悪いのか」(★西谷陽子:京都大学大学院医学研究科博士課程社会医学系専攻社会予防医学(法医学)) 「ナノスケールの世界〜走査型トンネル顕微鏡による表面研究」(★松浦志のぶ:東京大学大学院工学系研究科博士課程) ※この他,企画として「科学シンポジウム」「発想ワークショップ」「座談会(石浦章一・河東泰之)」が行われた.講師の肩書きは,セミナー実施当時のものである.